| ダイエット法 | 評価* | 報告における 効果の程度 |
科学的 合理性 |
メリット | 注意点 デメリット |
主観的コメント | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 運動からみた ダイエット |
A | 条件は様々だが、ヒト試験は豊富である | A | 運動量を増加させることは、量も確実な減量法 | A | ダイエットは運動量の増加につきる。継続可能なダイエットは上述のいずれの方法も運動量増加と組み合わせて、万人が減量可能となる | 運動量増加が出来ないほどの肥満の場合はカロリー制限による減量後に運動量を増す。急激または過度な運動量増加は身体のダメージに注意 | ダイエットは運動量の増加につきる。継続可能なダイエットは上述のいずれの方法も運動量増加と組み合わせて、万人が減量可能となる。ウォーキングは最も有効な、コストのかからない、安全なダイエット法である。まずは万歩計で自分の毎日の歩数を把握すること。まずこれが出来ない人はダイエットをする気が無いと考える。恰好や、10000歩にこだわらず、毎日無理なく(さらには楽しく)運動量を増やす工夫を各自が考え出すことが最初の一歩 |
*研究報告状況(かなりの量のヒトでの研究ありA、わずかな人での研究ありB、かなりの量の動物での研究ありC、予測の段階D
運動とダイエットに関する研究は膨大であり、またその内容が多岐にわたるために、レビュー論文も一言で内容を表せないという表現が多い。レビューと最新の研究をいくつか見てみた結果をまるめて表現すると
- 1・ エアロビクス運動(ウォーキング、ジョギング、ランニング、サイクリング、エアロビクスダンスなどの有酸素運動)が体重減少、体脂肪減少には有効である。一方、レジスタント・トレーニング(いわゆる筋トレ:筋肉に一定の負荷をかけて筋力を鍛えるトレーニング。ダンベル、トレーニング用のゴムチューブ、専用のマシンなどを使う)は身体能力を高める効果はあるが、体重減少にはエアロビクス運動の方がベターである。
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2・ 運動のみよりカロリー制限食+運動が体重減少に確実に有効である。運動のみの場合は運動必要量が相当大きくなると考えたほうが良い。
- 3・ 運動はその強さより、実施頻度が重要である。運動が身体状態改善に寄与するのはわずか数時間/週からはじまる。
- 4・ カロリー制限ダイエットにより減量すると、制限に対し、体が補償反応を起こしてエネルギー消費量が低下する。これが予定の減量が得られなかったり、リバウンドの原因になる。
カロリー制限ダイエットの後に運動を継続することによりこのエネルギー消費量の低下を抑えることが出来る。運動しにくいほどの肥満の場合はカロリー制限ダイエットのみから開始することになる場合もあるだろうが、継続的な体重メンテナンスには運動が欠かせない。
- 5・ ブリスクウォーキング(きびきびしたウォーキング)やジョギングはより効果的であるが、単に歩くことが、ライフスタイルを減量モードにするにもっとも経済的で有効な方法である。
健康21<厚生省が指導する21世紀における国民健康づくり運動>ではウォーキングに関して次のような指針が発表されています。
http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/top.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
成人に対して
日常生活における歩数の増加
1日当たり平均歩数で1,000歩、歩く時間で10分、歩行距離で600~700m程度の増加に相当
基準値:男性8,202歩、女性7,282歩(平成9年度国民栄養調査)
日常生活において身体活動量を増やす具体的な手段は、歩行を中心とした身体活動を増加させるように心掛けることである。健康増進関連機器の中で、歩数計を実際に使用している者は20歳以上の16.7%を占め、特に中高年者では3~4人に1人が使用しており(平成8年度健康づくりに関する意識調査)、個人が取り組む目安としても、歩数の目標値を設定することは有用である。
身体活動量と死亡率などとの関連をみた疫学的研究の結果6)からは、「1日1万歩」の歩数を確保することが理想と考えられる。日本人の歩数の現状では、1日平均で、男性8,202歩、女性7,282歩であり、1日1万歩以上歩いている者は男性29.2%、女性21.8%である(平成9年度国民栄養調査)。最近10年間の歩数の増加傾向を考慮して、当面10年間の目標として、男女とも歩数の1,000歩増加を目指し、1日平均歩数を男性9,200歩、女性8,300歩程度を目標とする。1,000歩は約10分の歩行で得られる歩数であり、距離としては600~700mに相当する。その結果1日1万歩以上歩く者は男性37%、女性30%になると見込まれる。
歩くことを中心とした身体活動を増加させることにより、生活習慣病の発症の数%減少が期待できる。
1日1万歩の根拠
海外の文献から週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されている。歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて、体重60kgの者が、時速4km(分速70m)、歩幅70cm、で10分歩く(700m、1000歩)場合を計算すると、消費エネルギーは30kcalとなる。つまり1日当たり300kcalのエネルギー消費は、1万歩に相当する。
高齢者に対しては
日常生活における歩数
目標値:男性6,700歩、女性5,900歩
1日当たり平均歩数で1,300歩、歩く時間で15分、歩行距離で650~800m程度の増加に相当
基準値:男性 5,436歩、女性 4,604歩(70歳以上)(平成9年国民栄養調査)
高齢者の日常生活動作能力のなかで、比較的早期から低下するのは歩行や起居などの移動動作にかかわる能力である。従って、高齢者が日常生活において歩行運動を積極的に行なうことは、日常生活動作障害に対する初期予防活動として有効である。
70歳以上の高齢者における1日あたりの平均歩数の現状は、平成9年では男性が5,436歩、女性が4,604歩であり、平成元年からの9年間に男性では約1,200歩、女性では約1,300歩増加している。そこで、今後10年間で70歳以上の者における1日当たり歩数の男女とも1,300歩増加を目指し、1日の平均歩数を男性6,700歩、女性5,900歩程度とすることを目標とする。高齢者にとって1,300歩は約15分の歩行時間に相当し、距離としては650~800mとなる。
以上、効果、経済性、安全性から考えて、ウォーキングを中心に身体活動量を増加させることが、体重減少には最も選択されるべき方法と思われる。10000歩/日という目標はヒトによっては高いハードルである。都会のコンクリ―道路をただ歩くことだけを目的に毎日10000歩、歩くことは拷問に近い。この10000歩/日という数字にとらわれたり、brisk walking(きびきびとしたウォーキング)でないと意味ないと思ったりする必要はない。強度より頻度(日常化すること)、現状より1000歩程度増やしてみること、すくなくとも万歩計で自分の状態を常に把握することが<はじめの一歩>と思われる。
「1日1万歩で健康」は間違い!?という情報が蔓延しているので、少しこれについて調べてみました。
以下は、2017-8-5のネットに掲載された情報です。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170802-00000068-sasahi-hlth
「1日1万歩で健康」は間違い!? 意外と知らない正しいウォーキングを専門家が解説Aera〈dot.〉
健康寿命を延ばすためにウォーキングを日課にしている人も少なくありません。ただし……。「誤った認識でウォーキングをおこなうと、かえって病気になったという人を大勢見てきました」と、警鐘を鳴らすのは東京都健康長寿医療センター研究所の運動科学研究室長・青栁幸利さんです。「まず、毎日1万歩以上歩いてさえいれば健康を維持できるという固定概念を改めましょう」
青栁さんは、群馬県中之条町に住む65歳以上の高齢者5千人を対象に、日常の身体活動(歩き)と病気予防の関係について大規模な調査研究を実施。15年以上続けておこなわれている「中之条研究」から、単に歩く(歩数)だけでは十分ではなく、歩く質(運動の強度)も重要である、ということがわかりました。なかでも中くらいの強度(中強度)がもっとも効果的だとか。
東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利氏の<中之条研究>とは
(1) 群馬県中之条町に住む65歳以上の高齢者5千人を対象としたものです。
(2) 対象者の健康状態とウオーキングの歩数と質の関係性を調べた研究です。
この記事は「1日1万歩で健康」は間違い!?というフレーズが全面に印象付けられるところが、問題です。しかし、WEB上の同じ青栁幸利氏の下記記事では誤解のない書き口になっています。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO12158880W7A120C1000000?channel=DF130120166093
■75歳からは「1日5000歩/中強度運動7.5分」を目安に
――年齢に関係なくとのことですが、70歳、80歳になっても、一生「1日8000歩/中強度運動20分」が理想なのでしょうか。
1. 前回「1日1万歩は間違い?ウオーキング黄金律の真実」でも紹介した「身体活動(歩数・中強度の時間)と予防できる病気の関係」の図(下)を見てください。基本は、「1日8000歩/中強度運動20分」で万病予防が理想です。しかし、体に違和感を覚えたときは「1日7000歩/中強度運動15分」に目標を下げる勇気をもつことも大切です。1日8000歩いて翌日に疲れが出る、膝が痛くなってきたなど、体が危険信号を発した時が、歩数を見直すきっかけとなります。

これでは、体重減少のためには一万歩歩くことが必要ということになります。
ところが、青栁幸利氏が著者ということになっている下記記事では、また違う印象が与えられます。
http://toyokeizai.net/articles/-/100087?page=2
<トライアスロンにはまった結果、動脈硬化>という見出しがついています。<運動のしすぎは、健康効果がないどころか、健康を害することになります。なぜなら、免疫力が低下するからです>といっています。筆者は<年齢や体の状態により、ウオーキング習慣を見直して、目標を下げる勇気をもつことも大切>ということを強調したかったということで、その主張は正しいと思います。しかし、<運動のし過ぎは体に良くない>という考えに対して、何をもってし過ぎというのか、いろいろな意見はあっても科学的コンセンサスはありません。8000歩/日が適切という意見がいつのまにか、トライアスロンという過激な運動を引き合いに出して、過剰運動は体に悪いというのは印象操作であり、科学的表現ではありません。
ある限定された研究から導き出された結論とスペキュレーション(証拠が十分でない、推測)が混ぜこぜになって専門家の意見としてあたかも絶対的真実であるかのように表現され、さらに記事として興味を引くように拡大解釈されて、ネットやTVに流れることが当たり前となり、それがいつのまにか世の中の常識となります。そして、時がたつと<常識は間違っていた、これが真実だ>というニュースが流れることになります。面白いとか、わかりやすいとかいう理由でネットやTVの記事にのめり込まないようにご注意願います。
さて、青栁幸利氏の話は以下の彼の研究論文が根拠となっています。
24732591 Associations of activity monitor output and an estimate of aerobic fitness with pulse wave velocities: the Nakanojo study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24732591
19776608 Habitual physical activity and physical fitness in older Japanese adults: the Nakanojo Study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19776608
20590838 Habitual physical activity and health in the elderly: the Nakanojo Study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20590838
以下の論文には青栁幸利氏も著者に一人として名を連ねています。上述の青栁幸利氏の主張とほぼ同様の結論になっていますので、こちらを見てみましょう。
21798044 How many steps/day are enough? For older adults and special populations.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21798044
この論文の内容をザックリと述べると以下の様になる。
高齢者および運動や身体的耐久力に限界のある身体障害や慢性疾患を持つ特別な集団は身体的活発な生活習慣を増加させること、特に歩行活動を増加させることから恩恵を得ることが出来る。一日何歩あるいたらいいかというと、標準的には高齢者は2000-9000歩/日、上記特別な集団は1200-8800歩/日である。歩数計を使用することにより高齢者は775歩/日、特別な集団は2215歩/日の増加がみられた。歩く速度は100歩/分、これはゆっくり歩くと普通に歩くの丁度境目で、3000歩/30分が経験的に薦められている。しかし、身体的障害のあるまたは疾患を持つ人では実行できない場合があるだろう。しかし、この程度の運動を少なくとも1回に10分継続すること、週に150分行うことが推奨されている。結論として、高齢者は7000~10000歩/日で、30分の中強度速度の歩きを含むことが推奨される。しかし、運動や身体的耐久力に限界のある身体障害や慢性疾患を持つ特別な集団はさらに低いレベルにする必要がある。
同じ流れの論文は以下の通り。
21798015 How many steps/day are enough? For adults.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21798015
21798014 How many steps/day are enough? for children and adolescents.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21798014
これ等の論文の結論は下図にまとめられています。

参考文献4
25257365 Diet or exercise interventions vs combined behavioral weight management programs: a systematic review and meta-analysis of direct comparisons.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25257365
イギリス。8つの研究のメタ解析、体重過剰及び肥満女性を中心とする1,022名対象。食事調節のみの体重減少プログラム、運動のみの体重減少プログラムと統合的体重減少プログラム<combined behavioral weight management programs (BWMPs)>を比較した。食事調節のみの体重減少プログラムと統合的体重減少プログラムは3~6か月後では効果に有意な差が無かったが12~18か月後では統合的体重減少プログラムの方が効果が大きかった。運動のみの体重減少プログラムと統合的体重減少プログラムは3~6か月後いずれも12~18か月後いずれも統合的体重減少プログラムの方が効果が大きかった。(2014年)
24409219 The effects of exercise training in addition to energy restriction on functional capacities and body composition in obese adults during weight loss: a systematic review.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=24409219
オーストラリア。14の論文を比較検討すると、中年から高年の肥満者にとって心血管系の健康、筋力の改善、体重減少の増加、除脂肪体重の維持に関して、カロリー制限のみより運動とカロリー制限の組み合わせの方が有効であった。(2013年)
26957777 Impact of brisk walking and aerobics in overweight women.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26957777
サウジアラビア、インド。体重過剰女性45名。 活発なウォーキング(brisk walking)、エアロビクス、両方やらないコントロールの3グループ。5日/週を10周。BMI、ウエスト・ヒップ周囲、肩甲下、二頭筋、三頭筋の皮下脂肪領域北に関して活発なウォーキング及びエアロビクスは効果があった。インド女性において、食事療法を伴うエアロビクスが活発なウォーキングより、BMIおよび皮下脂肪のコントロールや減少にもっとも効果があった。(2016年)
23221106 Lifestyle-based physical activity intervention for one year improves metabolic syndrome in overweight male employees.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=23221106
日本。体重過剰(BMI 23.0-45.5 kg/m(2))、一つ以上のメタボリックシンドローム指標を持つ、男性30-62 才、376名対象。歩数計を持つ10分/日以上継続のbrisk walking(きびきびとしたウォーキング)を1年間介入した。316名(84%)がこの介入を1年間、達成した。
ウエスト周囲、血中トリグリセリドは顕著に減少し、HDLコレステロールは顕著に上昇した。肥満男性にとってこのライフスタイル・介入はメタボリックシンドロームおよび内臓肥満を改善する効果的戦略である。(2013年)
19703317 Using pedometers to increase physical activity in overweight and obese women: a pilot study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19703317
オーストラリア。体重過剰または肥満女性26名を対象。歩数計をもって毎日歩く
歩数を記録するグループと記録しないグループを比較。12週間。万歩計で記録しているグループは12週間で1日の歩く歩数が36%増加した。対照群は変化なし。両グループの体重および体脂肪に有意な差はなかった。記録グループは対照グループに比して収縮期血圧が有意に低下した。(2009年)
18195317 A meta-analysis of pedometer-based walking interventions and weight loss.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18195317
米国。 メタ解析、歩数計を用いたウォーキング・プログラム(食事介入なし)に関する9つの研究を対象としたメタ解析。計男女307名対象。期間:4週間~1年、平均16週間。平均1.27 kgの体重減少。平均0.05 kg/週の体重減少。歩数計を用いたウォーキング・プログラムは中程度の体重減少効果が認められた。プログラムの短い実施より長い実施の方が効果があった。(2008年)
19056560 Fifteen-year longitudinal trends in walking patterns and their impact on weight change.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19056560
米国。18-30才、男女4,995名対象。15年にわたって、ウォーキングする人としない人を比較。ウォーキングと体重変化の間には大きな関係がみいだされ、例えば女性において、15年間で、0.5時間/日ウォーキングする人は8kg体重増加の低下を見た。成人において、ほとんどの成人が遭遇する長期間における体重増加をウォーキングは緩和する。(2009年)
